「シャボン玉」

 ここからいなくなりたかった。

   誰にも、

   見られたくなかった。

 見たくなかった。

   触れられたくなかった。

 触れたくなかった。

 生きたくなかった。

 死にたくもなかった。

 パンッと弾けてしまいたかった。
 シャボン玉みたいになりたかった。
 一瞬で生まれて一瞬で死ぬ。
 そんな風になりたかった。

   生きたいとも、
 死にたいとも、
 そんな感情が生まれる隙なんかないうちに、
 弾けてしまいたかった。

 泣いた夜はシャボン玉を吹いた。
 キラキラと月明かりに光るのが綺麗で、虚しかった。
 弾けて光るのが羨ましくて。
 いつまでも飛んでいく仲間はずれに自分を重ねた。

 シャボン玉になりたかった。
 誰にも気付かれずに消えたかった。
 さも、それが当たり前かのように。

 飛んでいきたかった。
 私を縛る全てから逃げたかった。
 ふわふわと飛んで、いつか、消えてしまう。

 シャボン玉になりたかった。

                     END

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