「雪」

 「真っ白だね。」
 辺りは白銀の世界。
 僕はポツンと呟くと、君はにっこり微笑んだ。
 「私はこんなに白くはなれない。」
 純白になんてなれないのよ、と
 君は苦笑するように微笑んだ。
 そんなことないよ。
 どうして言えなかったんだろう。
 君は十分綺麗なんだ。
 真っ白なんだよ。
 こころの奥を厚い壁で隠して。
 だから見えないけれど、本当は真っ白なんだよ。
 君は違うと言ったかもしれない。
 でも、
 本当は純白なんだよ。
 君が時折見せる本当の笑顔は、
 そうだということを教えてくれているから。
 君は気付かないだけ。
 誰もがみんな純白なんだよ。
 内にあるのは
 雪のように真っ白で、
 あったかい何かなんだよ。
 言っていれば君はもっと綺麗に笑ってくれたかな。
 美しい風景を
 君はうっとりと見つめていた。

   「真っ白だね。」
 君の心はきっとこの雪よりも白くて、
 汚れのないまっさらなもの。

                  END


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